最近、職場の同僚が異動することになり、そのために餞別を用意しました。餞別という言葉に馴染みがない方も多いかもしれませんね。
今回は餞別に関する以下のポイントを解説します:
- 餞別の意味
- 餞別と「はなむけ」との違い
- 餞別の他の呼び方
餞別の意味とは?
「餞別」(せんべつ)とは、新たな場所へと旅立つ人に、お世話になった旨の感謝の気持ちや幸運を願って、金銭や品物を贈る日本の習慣です。
具体的には、転職や転勤、退職する人に対して贈られることが多く、相手の新たなスタートを応援するためのものです。転居や留学など、遠くへ行く人にも同様に贈られます。
一般的には現金が贈られることが多いですが、品物を選ぶこともあります。
「旅立つ」とは?
「旅立つ」とは、新しい場所へ移ることを意味し、転職や留学などの大きな変化の際に使われる表現です。このような場合、人は新しい環境やチャレンジに向かうわけですから、「旅立つ」という言葉には新しい冒険への期待や希望が込められています。
餞別を贈る側の気持ちとそれ反映した贈り物を
餞別を贈る側の気持ちは、さまざまな思いが込められています。以下はその気持ちを整理したものです。
感謝の表現
餞別は、これまでの関係に対する感謝を示すために贈られます。共に過ごした時間や、支えてくれたことへの感謝の気持ちを形にして伝えるのが餞別です。
応援と激励
新しい環境へと旅立つ人への応援の意味も込められます。未来への期待や成功を願う気持ちを、金銭や品物を通じて表します。
記憶に残る贈り物をしたい
贈る品物は、受け取る人が新しい場所で新たなスタートを切る際に、過去を振り返りながら励みになるようなものであることが望ましいです。それによって、贈った人とのつながりを感じてもらえるような記憶に残るものが理想的です。
餞別を選ぶ際にはこれらの感情や意図を心に留め、相手にとって有意義で心温まる贈り物となるよう心掛けることが大切です。
餞別と「はなむけ」との違いは?
「餞別」とは別に、「はなむけ」という伝統的な表現もありますが、餞別と「はなむけ」の間には、贈る側の意図や受け取る側の印象に若干の違いがあります。これらの違いを理解することは、贈り物を選ぶ際に重要です。
餞別と「はなむけ」:贈る側の目的の違い
餞別の目的
主に、新たな環境へ移る人への励ましとして贈られます。転職、異動、退職、留学など、新しい挑戦やスタートに際しての感謝や応援あるいは激励が目的です。そのため、贈る物は、受け取る人が新しい環境で役立つものや、新たな生活を始めるにあたって心強さを感じられるものが選ばれます。
はなむけの目的
もともとは、旅立つ人が無事に目的地に着くことを祈って馬の鼻先を行き先の方向に向けるという古い習慣に基づいています。旅立つ人の安全と成功を祈る願いを込めて、精神的な支えになるものや旅の安全を祈る意味合いが込められているものを贈ります。
餞別と「はなむけ」:受け取る側の印象の違い
餞別の印象
現実的な支援や具体的な助けとして捉えられることが多く、新たなスタートに対する具体的な支援として、贈られた金銭や物が実際の生活の中で直接役立つことが期待されます。
「はなむけ」の印象
「はなむけ」は、出発する人の安全と無事を願い、馬の鼻を目的地の方向に向けて送り出す古い習慣から来ています。この行為から「鼻向け」が転じて「はなむけ(餞)」と呼ばれるようになりました。
このような経緯から生まれた言葉(読み方)でもあり、より感傷的または情緒的な価値を持つと感じられています。そのため、精神的な励ましや安全を祈る、その言葉が心に響くものであることが期待されています。
まとめ:受け取る側の印象の違い
「はなむけ」は結婚式や卒業式といったお祝いの場での挨拶で用いられることが多く、一方で「餞別」は引っ越しや転勤といった別れの際に渡す金品に対して多く用いられる傾向にあります。贈る際には、これらの違いを考慮して、受け取る人の状況や感受性、文化的背景に合わせて選ぶことが望ましいです。このような配慮をすることにより、贈り物がより心に残り、その意図が正しく伝わります。
餞別と「はなむけ」:表書き
餞別は「御餞別」と前に「御」をつけるのが一般的です。
贈り物の場合は、通常「はなむけ」ではなく、「おはなむけ」や「御贐」などと表記します。
餞別と「はなむけ」:水引きの種類と使い分け
水引きには主に蝶結び(花結び)が用いられますが、結婚して退職する場合などは結び切りが適しているでしょう。
地域によっては阿波結びを使用することもあります。
水引きの形式は地域や状況により異なるため、不明な点は周囲の人に確認することが望ましいです。
餞別の別の表現
餞別を表す別の言葉や類語には次のよう言葉があります。これらの言葉は、送別の際に使われることが多く、贈る物やその文脈によって使い分けることができます。
- 手向け
- 送別品
- 記念品
「手向け」の意味と使われ方
意味
旅立ちや新しいスタートを切る人への応援や祝福の意味を込めて贈られる物。新たな旅立ちを前にしてその人を励ますため、または新しい道を歩む人への支援として贈られることがあります。
使われ方
転職、異動、海外転居、留学など、大きな変化が予定されている人への送別の際に贈ることがあります。内容としては、その人の新しい生活や挑戦に役立つか、または思い出に残るような特別な品物が選ばれます。
「送別品」の意味と使われ方
意味
送別品とは、誰かが職場を離れる、引っ越す、退職する、留学や長期の旅行に出るなど、何らかの理由で集団やコミュニティから離れる人へ贈られる贈り物です。別れの際に相手に対して敬意を表し、人生の新しい章への幸運を祈るために贈られます。
使われ方
- 職場での送別会:従業員が転職、退職、異動する際に同僚や上司から送別品が贈られます。
- 学校や大学:学生が卒業したり、教員が他の機関へ移る際に、同僚や生徒から送別品を贈ります。
- 個人的な関係:友人や家族が長期間の旅行に出る、あるいは遠くに引っ越す場合に送別品を贈ることがあります。
贈り物に熨斗をつける場合、「御餞別」や「御贐」と書くのが一般的です。会社での栄転や退職の際などは、「御祝」や「御礼」といった言葉もよく使われます。状況に応じて、社内の人や店舗のスタッフと相談して決定するのが良いでしょう。
「記念品」の意味と使われ方
意味
「記念品」という言葉は、特定のイベント、出来事、または重要な節目を記念して贈られる物品を指します。その象徴的な価値によって特に大切にされることが多いです。
使われ方
- 個人の重要なライフイベントを祝う:卒業、退職など、個人の重要なライフイベントを祝うために贈られます。これらの記念品は、その人の人生の特定の時点を祝うものとして感謝を示すために用いられます。
- 企業や団体の記念事業の成功を祝う:会社の創立記念日、組織の重要なマイルストーン、特別な業績達成など、企業や団体の重要な出来事を記念して贈られることがあります。こうした記念品は、従業員や関係者にその特別な瞬間を共有し、認識を高める手段の一つとして用いられます。
「手向け」、「送別品」、「記念品」の熨斗(のし)袋の表書き
熨斗(のし)袋の表書きは、贈る品目やその目的に応じて選ばれます。手向け、送別品、記念品など、各種の贈り物に対する表書きの一般的なガイドラインを以下に示します。
手向け
- 「御手向け」、「御祝」(新しいスタートを祝う場合)
送別品
- 一般的な送別の場合:「御送別」
- 相手に対する感謝を表す場合:「御礼」
- 異動や退職などでの送別の場合:「御挨拶」
記念品
- 何らかの記念品:「記念品」
- 記念日や特別な出来事を祝う場合:「御祝」
- 特定の記念日やイベントを記念している場合:「御記念」
熨斗袋の表書きは、相手に失礼にならないように、贈る相手とその状況、贈り物の意図を適切に反映させるなどといったことが大切です。また、贈る側の立場や相手との関係によって、言葉遣いに「御」や「お」をつけることで敬意を表します。
熨斗袋の選び方や表書きは、文化や習慣にも影響されるため、不明な点があれば専門家に相談するのも一つの方法です。
おわりに
餞別を贈る際に特に注意が必要なのは、自分よりも立場が上の人に贈る餞別です。
立場が上の方へ個人名で餞別を贈ると失礼にあたることがあります。これは、個人名で贈ることは、次のように不快な感じを与えてしまう可能性があるからです。
- ある種の個人的な関係を意味すると捉えられる可能性があること
- 公私混同や過度の親しみと受け取られ、不快に感じさせてしまうことがあるためです
目上の人に餞別を贈る場合は、次のルールに従うと気持ちよく受けとってもらえるかも知れません。
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- 部署名や団体名で贈る:個人的な関係よりも職務や立場に基づいた公式な関係を保ちつつ、敬意を表すことができます。
- 熨斗(のし)を利用する:餞別に熨斗をかける際には、「御餞別」や「御礼」といった表書きにすることで、贈り物が公式なものとして認識され、敬意を表することができます。
- 贈るタイミングと方法:餞別をいつ手渡すかも大変重要です。可能な限り公の場、つまり、贈る相手が、他の同僚や上司たちと一緒にいるときに贈ることが、適切な行いとされてます。
このように、目上の人への餞別は、その贈り方によって相手に対する敬意を表現することができます。マナー守ることで、不快感を与えずに感謝や尊敬の気持ちを適切に伝えることができます。