餞別は、退職や転勤などで離れる方々への感謝と無事を願う気持ちを込めて贈るものです。この餞別専用の封筒（餞別袋）やのし袋の表書きや中袋の書き方および金額の書き方は、どのように記入するのが適切なのでしょうか？
ここではその記入方法について解説します。
解説に入る前に、あまり聞きなれない餞別袋について説明しておきましょう。
餞別袋は、多くの場合はのし袋の表書きを贈る目的に応じて「御餞別」または「おはなむけ」などと書いたご祝儀袋を指します。
日本においては、のし袋は贈り物を包む際に使用される専用の袋で、表面にのし紙が付けられています。この袋は、餞別や祝儀、香典など、様々な場面で使われます。一方で、餞別袋は、特に人が退職や転勤などの節目で餞別を贈られる際に使用されるのし袋の一種です。
餞別袋やのし袋の表書きの書き方は？
表書きの記入方法を次に紹介します。
表書きの記入方法
一般的には、「御餞別」と記入します。ただ、状況に応じて「おはなむけ」「御礼」「御祝」といった言葉を使用することもあります。例えば、異動や退職の際には「御餞別」「御礼」「おはなむけ」を、転居や新婚旅行には「おはなむけ」を選ぶことが多いです。
特に目上の方への餞別では、表書きに「御餞別」と書くのは避けた方がよいとされています。それは、「御餞別」という言葉が場合によっては少しカジュアルな印象を与えかねないためです。特に目上の方への敬意を表する場合には、「おはなむけ」「御礼」などの言葉を使用する方が適切です。これらの言葉はより丁寧な印象を与え、尊敬の意を示すことができます。
ケースごとの餞別を贈る意味と表書きの例
異動や転勤の場合
異動や転勤する人に対して、これまでの職場での支援、協力に対する感謝の気持ちを示すために餞別を贈ります。
表書きの例：「御餞別」、「御礼」または「おはなむけ」と書くのが一般的です。
退職
退職者の成果や貢献に対して、同僚や会社から感謝の気持ちを示すために贈られます。
表書きの例：「御礼」または「御退職御祝」と書くのが一般的です。
定年退職
長年にわたり企業や組織に尽くした労働と貢献に対する感謝の意を示すために贈られます。
表書きの例：「御礼」または「御退職御祝」と書くのが一般的です。
転居や引越し
新しい住まいや地域での生活のスタートを祝福するために贈られます。
表書きの例：「御餞別」または「おはなむけ」と書くのが一般的です。
新婚旅行
新婚旅行はカップルにとって共同生活の第一歩となる特別な経験です。餞別を通じて、その旅行が忘れがたい美しい思い出となることを願い贈ります。
表書き：「御餞別」または「おはなむけ」と書くのが一般的です。
海外出張や海外赴任
海外での任務やプロジェクトが成功すること、またその過程での安全が確保されることを願って餞別が贈られます。
表書き：「御餞別」と書くのが一般的です。
留学
留学生が学業において優れた成果を上げることを願い、長期的なキャリア目標の達成を支援するための贈ります。
表書き：「御餞別」または「おはなむけ」と書くのが一般的です。
旅行
安全と無事な帰還を祈って贈られます。
表書き：「御餞別」と書くのが一般的です。
これらの表書きは、その文脈や文化に応じて変わることがあります。特に目上の方に対しては、「御餞別」よりも「おはなむけ」や「御礼」を選ぶことが多いです。また、会社や団体によって定められた慣例に従うことも重要です。不明な点は、先輩や上司に相談するのが良いでしょう。
名前の記入方法（個人・複数連名）
餞別袋への名前の記入方法は、贈る人数によって異なる書き方があります。以下に、それぞれのケースに応じた記入方法を示します。
また、書くときに用いられる筆記具は筆ペンや墨で、濃い黒色を用います。
- 個人の場合の記入方法：水引きの下段に贈る人のフルネームを記入します。
- ２人の場合の記入方法：名前は、上位のひとから順に右から左へ並べます。特に、役職など区別がない場合は、右から50音順に並べます。
- 夫婦連名の場合の記入方法：中央よりやや右に夫の名前を書き、妻の名前は夫の名前に並べて書きます。
- 3人の場合の記入方法：3人で贈る場合、最も序列が高い人から順に右から左に並べて書きます。同格の人は50音順に右から左に並べます。
- 4人以上の連名の場合の記入方法：4人以上の場合、個々の名前をすべて記入するのは実用的ではないため、「〇〇部一同」「〇〇チーム一同」など、所属部署やチーム名で一括して記入するのが一般的です。個別の名前は別紙に記載し、のし袋の中に入れると良いでしょう。
- 社名や肩書をいれる場合：自分の氏名だけでは、相手が自分と判断できないという可能性がある場合、氏名の右横に小さめな文字で、社名や肩書を入れます。
- 宛名を入れたい場合：左の上に宛名を書きます。その場合、宛名に近いほうが格上になるので、連名の名前の書き方は、序列の高い人から左から右へ並べます。
これらの記入方法は、形式を保ちつつも、贈る人々の序列や関係性を適切に反映させるためのガイドラインです。場合によっては、地域や組織の慣習に従って適宜調整することが求められることもあります。
餞別袋の選び方と準備
餞別袋は、場合によって異なる色やデザインが選ばれますが、一般的には控えめで落ち着いた色合いのものを選びます。餞別袋を選ぶ際には、相手の立場や性別、さらには贈るシチュエーションを考慮に入れると良いでしょう。
注意すべきポイント
- 餞別はその性質上、心温まるメッセージを添えることが推奨されます。餞別袋に同封するメッセージカードには、簡潔ながらも心を込めた文面を記入しましょう。
- 餞別袋に直接金額を書くことは避け、非表示の部分に記入することがマナーとされています。
- 複数名での贈り物の場合、全員が納得する金額を設定し、誰がどれだけ出したかを明確にしておくことが大切です。
これらのポイントを踏まえて、相手に敬意を表し、かつスムーズに餞別を贈ることができるように心掛けましょう。
餞別袋に金額を記入する方法
以下に示す基本的なガイドラインに従うことで、餞別袋に礼儀正しく適切な方法で金額を書くことができます。
金額の書き方の基本
中袋に書く：金額は餞別袋には直接書かず、中袋に記入します。これは礼儀として、金額を表面に直接書かないようにするためです。
中袋に金額を書く際は、筆ペンや万年筆など、きれいに見える筆記具を使用することが望ましいです。
使用する数字：金額はアラビア数字または漢数字で明確に記入します。一般的にはアラビア数字が読みやすく、間違いが少ないため推奨されています。
「円」の付記：金額の後には「円」と書き、その後に「也」や「正」といった字を付けることがあります。例：「10,000円也」
金額の記入位置
金額の記入位置は、通常、中袋の中央のやや下の部分に書くことが多いです。
目上の人に餞別を渡す場合の配慮
目上の人に対しては、金額を書くこと自体を避け、その代わりに「心づけ」という言葉を使用する場合があります。これは、金額を直接書くことが失礼にあたるとされているためです。
組織の決め事がある場合
一方で、会社や団体などでは定められた形式があるかもしれませんので、先輩や上司に相談しながら進めることも大切なことです。
餞別を贈る際の最終チェック
すべての準備が終わったら、一度内容を確認して間違いがないかをチェックします。特に、表書きや金額、名前や住所の記載に誤りがないかを慎重に確認することが大切です。
